猫の腎臓病治療薬「AIM」とは?仕組みと認可の最新状況
以前、猫の慢性腎不全で半年に150万円、急性腎不全でステージ4から回復した話を書きました。どちらも当時はできる治療をやり尽くすしかありませんでしたが、「AIM」という薬が実用化されれば、状況は大きく変わるかもしれません。現時点で分かっている情報をまとめておきます。
AIMとは何か
AIMは、体内のマクロファージ(免疫細胞の一種)が作るタンパク質で、本来は体内の不要な細胞の残骸を除去する役割を持っています。
猫の場合、このAIMが「IgM」という別のタンパク質にしっかり結合してしまい、うまく働けなくなる(不活性化される)という特徴があることが分かってきました。この結合状態のせいで、腎臓の尿細管に老廃物が詰まりやすくなり、それが猫の腎臓病の多さに関係しているのではないか、というのが研究の出発点です。
猫の腎臓病治療薬としての研究は、東京大学の宮崎徹教授が主導しています。
研究を支えた、全国の猫好きからの支援
AIM研究には、印象的なエピソードがあります。2021年、コロナ禍の影響でスポンサー企業からの資金援助が続けられなくなり、研究が一時ストップしかけたことがありました。
宮崎教授の著書『猫が30歳まで生きる日』の取材の中でこの資金難について語ったことがきっかけとなり、猫好きの人たちの間でSNSを通じて支援の輪が広がりました。その結果、一晩で数千件もの寄付が集まり、最終的な寄付総額は3億円近くにのぼったといわれています。
研究者個人の発信から、これほど大きな支援につながったのは異例のことで、それだけ多くの飼い主が「猫の腎臓病をなんとかしたい」と願っていたことの表れでもあると思います。
治験で分かっていること
2025年5月から、慢性腎臓病の猫を対象にした治験が始まりました。対象となったのは、IRISステージ3(4段階のうち3番目、やや重度)の猫です。
治験では、以下のような結果が報告されています。
- 病気の進行が抑制された
- 360日生存率が大きく改善した
- 尿細管に詰まった老廃物の除去が促進され、尿細管の閉塞が改善した
- 腎臓の線維化(組織が硬くなり機能が低下すること)を抑制できる可能性がある
投与は注射で行われ、2週間おきの投与で効果が持続することも確認されています。人間用の薬と同様に、投与前には安全性を確認するための試験(2024年6月開始の最終安全性試験など)も行われています。
ただし、腎臓病は高血圧・炎症・遺伝・加齢など複数の要因が絡んで起こる病気です。AIMだけですべてが解決するわけではない、という指摘もあります。
現在の認可状況
2026年4月24日、農林水産省に製造販売承認が申請されました(販売名:FeliAIM)。現在は審査中で、年内の承認が期待されている段階です。適応基準や具体的な投与方法については、まだ公表されていません。
農水省は、新規性や社会的ニーズの高い医薬品を迅速に承認する仕組みを進めており、開発を主導する宮崎教授も「今年中に承認が下りれば」と話しています。
価格の見通し
現時点の想定では、6回の注射で10万〜15万円程度が計画されているとのことです。うちの慢性腎不全の治療費(半年で150万円)と比べると、実用化されれば負担はかなり変わりそうです。
人間用の薬としての研究も進行中
AIMは人間の腎臓病治療薬としても研究が進んでいます。人間用の治験薬は年内の完成を目指しており、実用化はさらに3〜4年後が見込まれているとのことです。
それまでにできること
まだ承認前の段階なので、現時点でできることは変わりません。
- 定期的な健康診断・血液検査での早期発見
- 食事管理(療法食への切り替えなど)
- 水分摂取を増やす工夫
- かかりつけ医との継続的な相談
慢性腎不全の記事でも触れましたが、早期発見と地道な通院が、今できる一番の対策であることに変わりはありません。
まとめ
AIMが実際に承認され、動物病院で使えるようになるまでには、まだ確定していないことも多くあります。それでも、猫の宿命ともいわれる腎臓病に対して、これほど具体的な治療薬の話が進んでいるのは、大きな希望だと感じています。続報が入り次第、この記事も更新していきたいと思います。
※本記事は公開情報に基づく記録であり、薬の承認状況は変わる可能性があります。最新情報は、農林水産省やAIM医学研究所などの公式発表をご確認ください。獣医療行為や診断を代替するものではありません。